いろいろな医療
体に異常がある時、一般的に病院などの医療機関を受診すると思います。
しかし、病院をはじめ、自分が受けようとしている医療サービスがどんなものなのか、良く理解している方は少ないと思います。
そこで、簡単に各種医療の特徴など説明させていただこうと思います。
【 病院、診療所 】
国家資格の医師免許を持った医師が診察、治療をしてくれます。
一般的にはこちらを利用する機会が一番多いと思います。基本、健康保険が使えます。
主にエビデンス(科学的根拠)に基づき、投薬や手術の「対症療法」が治療の中心になります。
「対症療法」とは、根本的な原因の解決ではなく、症状や数値などの「結果」に対して薬や手術で対処することです。
そもそも「薬」とは、多くの方が「病気を治す為のもの」だと思っていますが、薬の主な役割りは「数値を下げたり、痛みや症状の緩和」で、根本的にという意味で「治す」ことはできません。
いわゆる慢性的な病気や痛みは、薬を飲めば症状や数値は緩和しますが、多くの場合、止めればまた症状が出たり数値が上がってきます。
例えば、「高血圧治療薬」で血圧を下げることは出来ますが、「高血圧症」そのものは治せません。
臭いものに消臭スプレーを使い続けると言ったら分かりやすいでしょうか。
消臭剤の成分が効いている間は臭いは消えますが、臭いの元を変えているわけではありませんので、消臭成分の効果が切れると、また臭ってきます。
血圧の他にも、コレステロールなどの脂質異常、糖尿、痛風、胃腸薬、便秘薬、頭痛、痛みの消炎鎮痛剤、ぜんそくや花粉症などのアレルギー疾患、リウマチなどの自己免疫疾患、うつなどの精神疾患など、多種多様な薬がありますが、目的は「症状や数値の緩和」で、根本的に治しているわけではありません。
薬を飲んでいる間に状態が安定して、薬を止めても症状が出なくなる場合もありますが、根本的な原因が治っている訳ではありません。
そして、長期間の使用時は、副作用も少なからずあることも知っておく必要があります。
ただし、感染症の「抗生物質」、「抗真菌薬」、「一部の抗ウイルス剤」などは、薬が効いて原因となる菌やウイルスを駆除できれば根治になります。
また、生命の危険がある一刻を争う救命救急医療や緊急外科手術、急性期の症状や痛みの緩和、そしてCT、MRI、内視鏡、血液検査など体の中の状況を知る為の検査などは、非常に有効です。(但し、骨格に関しては、骨が歪むという概念が無いので異常があっても異常として認識されません)
将来的に、遺伝子治療やIPS細胞などの臨床が進めば、本来自然の摂理では自己治癒できないような病気なども改善できる期待もあります。
一方で、整形外科領域の腰、股関節、膝の手術などは、必ずしも患部が本当の原因ではないので、対症療法となります。
例えば、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症なども、MRIなどで腰椎の変位は確認できますが、では、「なぜ腰椎がそのように変位したのか?」という、もう一歩先の原因には対処しません。
毎年1兆円規模で医療費が増え続けている中で、近年は「予防医学」という概念も提唱されていますが、対症療法中心の現代医療では、予防として出来ることは限られています。
東洋医学的な考えも取り入れて、体質改善や治癒力の底上げを狙う「統合医療」を行っている病院もありますが、混合診療の問題もあったりして少数派です。
【 整骨院、接骨院 】
国家資格の柔道整復師が診察、治療をしてくれます。
原則として、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷など「急性症状」の場合のみ、健康保険が使えます。
高齢者などに多い慢性的な肩こり、腰痛、膝痛などは、医師の指示がない限り、健康保険適用になりません。
が、慢性症状も保険で診察してしまう整骨院もあったり・・・。
主に手技での整復術や、電気治療をしてくれます。
基本的に「対症療法」で、骨格が歪む、変位するという概念がないので、残念ながら多くの場合根本的な解決はできません。
例えば、足首の捻挫でも、だいたいは湿布、電気治療、固定などでしばらく安静にして、炎症が治まり痛みが引くのを待ちます。
しかし、多くの場合、捻挫した時に力が掛かった足首周辺の骨やじん帯は変位して歪んでいるのですが、そこまで修正してくれる整骨院は少ないです。
歪んだ骨がそのままであれば、引っ張られた筋肉やじん帯に常に無理が掛かっていますので、いつまでも違和感が残ったり、スポーツなど無理をすると痛みが出たり、繰り返し捻挫することも多いです。
慢性症状にも、電気をかけると凝っている筋肉が緩んだり、炎症が治まって楽になることはありますが、何故そこが硬直、炎症をおこしたのかという原因には対処しません。
保険適用ではない慢性症状には、整体など自由診療(実費)で対応している整骨院もあります。
【 はり、灸 】
国家資格の鍼灸師が治療してくれます。
整骨院と併設していることも多いです。
健康保険は一部の症状を除き、医師の指示、同意がないと使えません。
中国から伝来し、長い歴史があります。
なぜ効果があるのか、未だ科学的なメカニズムはわかっていませんが、経穴(ツボ)を針や熱で刺激することにより、痛みや症状を緩和したり、血行を良くしたり、自己治癒力を高めたり、自律神経を安定させたりできます。
ただし、筋肉もツボを刺激し凝っているところが緩むと楽になりますが、なぜそこが凝る状況になったのかという根本的な原因に対しては対応しません。
【 あんま、マッサージ 】
国家資格の按摩マッサージ師が施術します。
健康保険は医師の指示、同意がないと使えません。
按摩、マッサージ、指圧とありますが、凝って硬くなっている箇所を押したり、揉んだり、撫でたりしてほぐし、血液やリンパの流れを良くし症状を緩和させる治療法です。
電動のマッサージチェアや、揉みほぐしなどと同じ原理です。
しかし、他と同様、なぜその部分が凝る状況になったのかという根本的な原因に対しては対応しません。
クイックマッサージなど安価なところは、国家資格を持たないマッサージ屋さんもあります。
施術後はほぐれて楽になるかも知れませんが、逆に指圧された筋肉や骨に歪みを作り、揉み返しや、余計に筋肉の柔軟性がなくなることもあります。
【 整体、カイロプラクティックなどの民間療法 】
整体やカイロプラクティック、オステオパシー、〇〇療法などが「民間療法」となります。
国家資格ではありませんし、健康保険は使えません。
これが、皆さんが一般的に一番良く分からない世界だと思います。
法的分類だと「医業類似行為」となりますが、そもそも「整体」とはこうゆう治療法だという一律の定義がありません。なので色々な考え方、治療法が存在します。
カイロプラクティック、オステオパシーなども現在は色々な方法に派生し、定義のある治療法ではなくなっています。
大きく分けると、筋肉系にアプローチするもの。骨格系にアプローチするものに分かれます。更にそれぞれに、色々な考え方や理論があります。
正直、一般の方は何が何だか、何が一番良いのか、選ぶにも非常に難しいと思います。
病院など国家資格者の治療は、治る治らないは別にしても、エビデンス(科学的根拠)があったり、一律の方法があり、少なくとも安全性は担保されますが、民間療法の中には「矯正」の名のもとに、頸椎や骨盤に対して無理やりな施術をして事故をおこしたり、筋肉を強く押すことで逆に歪みを作ったりするところもあるので要注意です。
※ただし、エビデンスというのは、「この治療をすると、だいたいこのような結果になる」という根拠が出来ているというだけで、「エビデンスのある治療」=「最良の治療」とは限りません。なので、患者さんが求めている結果とは違う場合もあることは知っておいた方が良いです。
一つ例を挙げると、多くの整体やカイロでは、首や肩周辺が痛かったら首、肩周辺、腰なら骨盤調整や腰周辺など患部周辺を施術する治療法が多いですが、これらは手術と同じで根本的な解決ではありません。
ですので、いきなり首や骨盤など患部周辺のみの施術をする治療法は要注意です。
少なくとも施術を受ける前に、論理的に何故こうなったのか。それをどのように正しくするのか。どのような手順で施術を組み立て、最終的にどのようなゴール(状態)を目指すのかなど説明してくれるところを選ぶべきです。
【 最後に 】
「治る」、「治った」という日本語も曖昧な言葉で、どのような状態が本当の意味で「治った」となるのか。
一般的には症状が無くなれば「治った」と思いがちですが、下地は変わってなく、運良く症状が「おさまった」だけの場合がほとんどです。
ギックリ腰なども、湿布などして安静にしていれば一週間くらいで痛みは楽になりますが、筋肉に無理をかけている下地の骨格の歪みは変わっていません。
火山の噴火みたいなもので、噴火して、しばらくして噴火は一時的に収まっても、地下にマグマはあります。
長い間静かな妙高山もあれば、活発な焼山などがあるように、人間も歪みや無理のかかり具合によって症状も様々です。
現状に満足されている方は良いのですが、満足できていない場合は、もう一歩、二歩先の原因となる下地を改善する必要があるかも知れません。
どれが良いとか悪いとかではなく、客観的にそれぞれの医療サービスで「出来ること」、「出来ないこと」を理解することが大切です。
長くなってしまいましたが、いずれの医療を選ぶにしても、メリット、デメリットを理解し、ご自身の価値観で納得して選ぶべきかと思います。